不動産と相続~親から子への資産承継~

相続税・贈与税は増税の傾向にあり、以前のようにお金持ちだけが気にしなければならないものではなくなりつつあります。相続対策の本やWEBページを見ると、不動産を活用した節税対策を記述したものが目立ちます。

節税対策ももちろん大切ですが、相続対策の本質は、親から子へ、できる限り優良な状態の資産を継承することにあると思います。税金対策をすることで、資産価値が下がってしまえば本末転倒です。

節税対策と資産価値向上、このバランスを取りながら、お子様への資産承継を成功させるために注意すべき基本的ポイントを見ていこうと思います。

不動産を所有することのメリット

①相続税評価減

すでにご存じの方も多いと思いますが、不動産を活用した相続税対策の根本には、不動産の時価(売却する場合の金額)と、相続税評価額の差額に着目する、ということがあります。細かい説明は他のWEBページに譲りますが、現金で持っておくよりも、不動産で持っておいた方が、基本的には相続発生時の資産評価が低くなるため、節税効果が生まれます。

②人に貸せば、定期収入が入り、更に相続税評価が下がる

賃貸アパート・マンション・ビルであれば収入が生まれます。退職後の生活を支えてくれる定期収入として、人生を豊かにしてくれます。

また、売却する場合には、高い収入を生んでいる不動産ほど高く評価されますが、相続税を算出するための相続財産評価では、他人に貸している不動産は、権利の一部が制限されていると考え、評価が下がることになります。また、所有している賃貸物件については、一般個人の方でも、建物の減価償却を経費として計上することで、所得税の節税にもつなげられます。

不動産を所有することのデメリット

①管理コスト

自宅であっても、賃貸物件であっても、適正に管理する必要があります。不動産管理会社に依頼すれば委託料がかかりますし、自分でメンテナンスすれば労力がかかります。

②分割しづらい

現金や証券と違い、不動産は分割しづらいのが弱点です。

③投資額が大きい

不動産の規模にもよりますが、1千万単位、もしくは億単位の投資が必要になることが多く、ローンを組めば負債が増えます。現金では購入できない優良不動産を取得できるなど、ローンを利用して不動産を取得するメリットもありますが、リスクも増えることになります。

④市場変動リスク

さまざまなニュースにもある通り、今後日本は人口減少が進み、国内需要がしぼんでいくことはほぼ確定路線です。その中でもあらたな産業は生まれていくと思いますが、賃貸用不動産の場合、人口減はとても大きなリスクとなります。

その中でも賃貸用不動産の数は増えており、競争が激しくなっています。都内でも、狭い部屋の物件は入居率が落ちてきています。

⑤売却や建替え、抵当権設定には本人の意思能力が必要である

一般的に自分の相続対策を始める時期は、退職後である方が多いと思います。平均寿命が長くなっていく中で、認知症患者も増加しております。認知症や、大きな病気で寝たきりになってしまうと意思能力が無いということになり、売却や建て替えなどの法律行為ができなくなります。いままで準備してきた相続税対策が水の泡になってしまうこともあり得ます。

今後の不動産活用方法の方向性

このような状況下で、どのように不動産を活用していけばよいかという問いに、確実な答えはありません。しかし、大まかな方向性としては、下記のようなことが考えられると思います。

海外からの流入人口の機会獲得

国内の人口は減少することが確実ですが、今後海外から、ビジネス、留学など様々な目的に日本にやってくる人が増えていくであろうと考えられています。残念ながら日本では、不動産オーナーが外国人の入居を拒否するということが頻繁に起こっています。そのため、外国籍の入居者を受け入れる賃貸用不動産には高い需要があります。

現在では、言葉の壁は保証会社が対応してくれることも多いです。また、英語や中国語が通じる不動産会社も増えています。筆者も将来に備え英会話を学習しており、一般的な日常会話はできるようにしております。

ひとくくりに外国籍と言っても、それぞれの国で文化が大きく異なりますが、全体的な傾向として、高所得のビジネスマンは、家賃が割高でも、日本人よりも広い部屋を希望し、東南アジアからの留学生や低所得者層は狭い部屋でも低い家賃を希望する、2極化の側面が強いと思われます。このような層を獲得するために、外国籍の方限定の、高級賃貸マンションや、シェアハウスを運用することなどが考えられます。

分散投資

市場リスクをなるべく回避しながらも、安定した収入を得るために、分散投資という発想が出てくると思います。不動産で分散投資という場合、小規模の様々な種類の不動産を数多く所有するか、大きな賃貸マンションの中に、ワンルームやファミリータイプなど、複数のスタイルの間取の部屋を作る、などの方法が考えられます。不動産を複数所有することは、分割しづらいという不動産の短所を補う方法にもなります。

管理対策

高齢になってから、不動産管理を自分で行うのは大きな負担になります。仮に不動産管理会社にある程度任せていても、修繕や契約などの意思決定は自分で行わなければなりません。

もし身の回りに誰も手伝ってくれる人がいなければ、サブリースなどの契約を利用すると負担は軽減できますが、収入が減ってしまいます。

一番良いのは、将来相続人となる子供に、どこかの時点で業務を引き継ぐとことです。自分が認知症などで意思能力を無くしてしまう前に、移行型任意後見契約などの方法で、子供に業務を引き継ぐことができれば、安心して生活することができます。

また、不動産会社、税理士でも、相続対策に精通していないと、あまり有効な提案や、お手伝いをしてもらえないことも多くあります。ビジネスパートナーの選定も重要な要素のひとつでしょう。

まとめ

不動産や相続は、専門的な知識を要し、対応にはそれなりのエネルギーを必要とします。また、本当に重要なのは節税ではなく、自分の退職後の楽な暮らしと、優良資産を子供に承継することのはずです。ひとりで抱え込まず、家族に相談しながら、適切なビジネスパートナーを見つけ、楽しく相続対策・資産運用に取り組むことができれば、それが一番良いのではないでしょうか。

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