不動産売買における土地の測量

売買のタイミングで行う土地測量

土地、または一戸建てを売買する場合に、土地を測量しなければならないことがあります。多くの売買契約書のひな型では、土地の境界明示を売主の義務として記載しております。しかし、売主が必ず境界を明示しなければならないということではなく、売主としては契約書にかかれた通りの状態にすることが必要となる為、境界を明示せず引き渡すという特約がついていればその通りになります。

しかし、境界未確定のまま取引された土地は、その後土地上や隣地に建物を建てる際に問題が起こる為、売買のタイミングで土地測量を行うのが一般的になっています。

土地の測量には費用がかかりますので、測量費用を負担する売主としてはなるべく低い金額に抑えたいところです。(ちなみに測量費用の負担者も、特に建売業者が買主の場合などに、特約等で買主とすることもあります。)

境界明示のしくみ

どういうときに、どういう測量作業が必要になるのか、なぜ金額が高かったり安かったりするのか、具体的な例題を基に記載します。みなさんのご参考になれば幸いです。

さて、上記のような土地を売却するときのことを考えていきましょう。

売買契約書に、”境界「標」の明示”が売主の義務とされている場合には、原則的には、A~Iの全9箇所に、プレートや石杭、金属鋲などの境界標を設置する必要が生じます。境界標を設置せず、図面にてここが境界です、と明示する方法もありますが、分かりづらいため、一般的には境界標を設置する方法が採られます。

あくまでどのような測量や境界明示方法を採用するのかは、買主と売主の話し合いの中で決める事であり、必ずこうしなければならない、というルールはありません。しかし、買主としては、自分が思っているような土地利用ができなければ土地を買う理由がなくなってしまいますので、通常は買主の利用用途、もしくは買主の属性(一般個人なのか、不動産会社なのか、など)によって、測量の方法が決められ、測量費用が高くなる場合などは、売買金額の調整によって、買主と売主の間で交渉が行われることになります。

境界設置の場合、土地家屋調査士に依頼し、測量図を作図した上で、その境界と接する人にも現地を確認してもらう立会作業や、立ち会ったことを証明する図面への署名押印作業などが発生します。それぞれの境界点についてご説明しておきます。

境界の種類

・A・I

 道路と接する境界は”官民境(かんみんざかい)”などと呼ばれます。境界標が無い場合は、それぞれ隣地①⑤と、公道の管理者(港区、横浜市、など)との立会作業が必要となります。

・B・D・H

 折れ点についても境界標が必要となります。立ち合い者はそれぞれ隣地①・②・⑤です。

・C・E・F・G

 直線上にありますが、隣地にとっては境界の為、境界標が設置されているはずの場所です。直線上の隣地境は、明示が省略されることも多いですが、契約書に何も記載がないと、買主と売主の認識の違いによるトラブルが起こりやすいため、契約書に明記する方が望ましいです。それぞれ、自身を含めて三者が立ち会う”三者境(さんしゃざかい)”となります。

・セットバックライン

 前面道路の幅員が4m未満の場合は、道路中心線から2mのところまでは、建物建築の際に、道路として提供しなければならないことが、建築基準法で定められています。道路中心線は、現地の見た目だけでは判断できないこともあり、また、条例によっては中心から2mよりも大きく後退する必要がある場合もありますので、確認が必要です。契約書上で、セットバックラインの明示を売主の義務とすることはあまりありませんが、仲介会社が作成する重要事項説明書に記載の必要があり、また、買主としても必要な情報である為、測量図作成の際に一緒に行うことが多いです。

ケース1:中古戸建てとして、または自宅用地として売買する場合

境界標がすべてそろっており、法務局備え付けの地積測量図があれば、測量作業をせずに売買することも多いです。(地積測量図とは、過去に測量した際の図面で、法務局に届けられているもので、法務局に行けば誰でも取得できます。法務局はオンライン化されておりますので、管轄法務局でなくても取得できます。オンラインサイトのIDを取得すればオンラインでも取得可能です。)

ただし、過去の測量は現在と方法が異なっており、測りなおすと面積に差異が生じることがあります。特に下記のような三斜求積法を用いて作図されたものは、差異が大きくなることが多い他、昔の物は計算が間違えていることがままある為、現地をメジャーで測ってみて、測量図の周り間(まわりけん、各辺の寸法)と大きく違っている可能性がありそうでしたら、現地にある境界標を基に、仮測量図の作成だけはしておいた方が無難です。

三斜求積図 三角形の面積=底辺×高さ÷2のため、

      {a×(b+c)+d×(e+f)}÷2で全体の面積を求める。

現在は座標値法と呼ばれる方法で測量しており、三斜求積法よりも正確で、後々も再現がしやすくなる。

境界標が1箇所でも欠けている場合、新たに設置するのはそんなに簡単ではないことがあります。例えば境界Aが欠けている場合、役所側に道路の測量図(道路査定図)が備え付けられている場合は、それに基づいた復元がしやすいですが、無い場合(道路未査定)、道路の測量が必要になるケースがあります。道路の測量は売却不動産の前面だけでなく、一定の区間全体の測量が必要になり、費用が高額になるケースもあります。契約書に官民境の境界画定は省略するなどの特約をいれておくかどうかは状況に応じた個別判断となります。

境界Bが欠けている場合で、測量した結果土地が登記簿面積より大きくなる可能性がある場合、隣地①だけでなく、他の隣地②③④⑤の土地が小さくなってしまう可能性が生じます。古くから測量されていない土地で、明確な境界線が分からない場合などは、場合によって周りの隣地もすべて測量する必要が生じるケースがあります。

測量は、契約後、引渡し前に実施することが多いため、思ったよりも多額の負担が生じることが無いように、測量の方法を契約書に明確に定めておき、買主と売主が納得の上で進めることが重要です

ケース2:建売業者に売却し、土地の分割を前提に測量を行う場合

土地の分割の際には、最終的に法務局に、分筆登記(登記簿上1つの土地を2以上に分ける登記)を申請する必要があります。分筆登記申請をするためには、まず自分の土地の範囲を明確にし、登記内容との面積等の差異を明確にし、境界標を設置し、分筆位置を確定して、図面を付けて申請する必要があります。原則周辺のすべての隣地所有者(道路管理者である行政含む)の立会書への捺印が必要なりますが、過去の立会書が残っている場合には、それを利用できる場合もあります。周辺の土地の測量図と今回の測量結果に違いが生じた場合(例えば形、折れ点の位置、辺の長さなど)、法務局から再調査を指示されることがあるため、土地家屋調査士を通じて事前に法務局に相談しておくことがあります。

官民境も含めてすべての境界について立会書を作成することを”確定測量”、登記簿と測量結果の面積に差異がある場合、正しい面積で登記しなおすことを“地積更正登記”と呼び、一般的にはケース1よりも高額になります。

測量費用について

測量の費用は、依頼する土地家屋調査士によってまちまちです。10万円単位、時には100万円単位になる測量費用は、なるべく低く抑えたいところです。しかし、測量作業は隣地の方にご協力いただきながら進めるデリケートな作業であり、土地家屋調査士の話しかた、態度が悪いとトラブルに発展することがあります。費用だけでなく、人柄、知識、経験などを考慮して、依頼する土地家屋調査士を決定することをお勧めします。

まとめ

測量は、専門的な知識や、時には折衝能力が必要な作業であり、人と人との思惑も影響するデリケートな作業です。専門家にアドバイスをもらいながら、寛容・柔軟な態度で、ご自身でも必要最低限の知識を得ながら対処する必要があると思います。

地方の土地の測量であっても、ご相談だけでしたらご対応いたします。お気軽にお問い合わせください。