借地権のよくあるご相談

都市部に多い借地権

東京都・神奈川などの都市部は借地が多く、当社でも、借地人様からも、地主様からも、ご相談をいただく機会が多いです。借地は、戦前・戦後からスタートしたものが多く、契約書が存在しないか、あってもあいまいな文章の物が多く、トラブルの絶えない分野です。

借地は、地域や地主様の個人的なご事情などにより、地代や更新料などに関するルールが大きく異なるため、問題解決には一定の知識や経験の他に、柔軟性の高い対応、寛容性が必要となります。今回は当社の経験から、借地権についてご相談いただく、一般的な問題の内容を記載してみます。

借地人様からのご相談

借地人様からのご相談の多くは、大きく2つに分けられます。一つは、更新の時期を迎えて高額な更新料を支払うのが難しいというご相談。もう一つは借地権が不要になったので地主様に返還したいというご相談です。

(a)借地権更新契約の際の注意点

借地契約の多くは、戦前戦後から始まっており、最初の契約は昭和10年代~40年代に締結されています。当時の契約書は、簡易的な条文になっており、もしくは口頭で約束しており、更新料や、譲渡承諾料(売却する際に地主様に支払う承諾料)などの具体的な記載がありません。基本的に記載がなければ更新料を支払う必要はありませんが、今までの更新で毎回更新料が支払われていたりすると、更新料については本人同士で合意していたとみなされることもあるようです。また、法的には支払う必要が無くても、その後の関係の悪化を回避するために、一定の更新料を支払った方が良いケースもあります。

不動産会社の実務としては、今までの状況を双方から聞き取った上で、なるべくご本人様たちのご要望に沿う形で、借地権更新の契約書作成を代行し、手続きをお手伝いするケースが多いです。この際に、更新料、譲渡承諾料、建て替え承諾料等を、具体的な計算式と一緒に契約書に記載できれば、将来のトラブルを減らせるかもしれません。

(b)借地契約終了の際の注意点

借地契約書の多くには、契約終了時には建物を解体し、更地にして地主様に返還すると記載されています。ただし、借地権は所有権に準ずる権利として、第三者に売却することができる資産です。地主様に無償で返還してしまう方がいらっしゃいますが、買い取ってもらうことをお願いしたり、金額が折り合わなければ他人に売却したりすることが可能です。他人に売却する際には、地主様の同意と、譲渡承諾料の支払いが必要となり、地主様は優先的に自分で買取ることもできます。なるべくトラブルなく進めるために、まずは地主様、もしくは地主様側の不動産会社や弁護士とお話ししてみることをお勧めします。

地主様からのご相談

地主様からのご相談で多いのは、借地人様に相続が起こり、その子供に借地権が移った後、地主様、借地人様の間で起こるトラブルです。多くのトラブルは地主様が借地人様に、借地権の無償返還や、退去を要望することで起こります。

借地権は、相続が起こった場合には、自然と親から子へ、(もしくは兄弟や孫などの相続人へ)権利が移転すると考えられており、この際には地主様の承諾は不要です。地主様の自己都合で、借地人様に退去を要請することは、原則的にはできません。借地人様は、更新料、建て替え承諾料等を支払えば、当該借地を使用する権利があります。

前述の通り、川崎の借地は戦後土地の利用方法にあまり選択肢がなかったころに始まっており、地主様にとっては、現在はあまりメリットが無いものとなってしまいました。いったん借地人様に退去してもらってアパートなどを建築した方が、収入が増えるのですが、借地人様が複数いるような土地ですと、退去してもらうのはかなり難しくなります。

更新、譲渡、建て替え、相続等、要所要所のタイミングで、借地人様との打ち合わせの場を設け、よく話し合った上で、合意した事項を書面に残していく地道な作業の積み重ねにより、状況を少しずつ変えていくしか方法がないことが多いようです。

なお、1992年8月に借地借家法が施行され、それ以降に締結した借地契約に関しては新法が適用されますが、それ以前からの契約は、旧借地法が適用されます。本人間で新法を適用するという覚書を締結したとしても、借地人に不利な内容として無効となる可能性がありますのでご注意ください。

まとめ

借地権には歴史があり、合理的な理屈では処理できない問題が多くあります。ですが、トラブルの原因の多くは、借地人様、地主様、お互いの理解不足であり、話し合いの場を設けることで解決する物も数多く存在します。感情的になればなるほど問題解決からは遠ざかります。抜き差しならない状況になってしまったら、第三者を挟んで話し合いに臨んだ方が、多少費用がかかっても、長い目で見れば経済的かもしれません。

当社でも、ご相談だけでしたら地方の借地権に付いてもご対応できるかもしれません。迷われたらお問い合わせください。