財産分与が成立して10年以上経過してから、ローンが残っている不動産を売却したい
購入時は男性がローンを借りたが、離婚で不動産は女性のものに。しかし女性が低収入で、他に夫婦共有の財産も無かったため、ローンの借入者や不動産の登記名義を男性から女性に変更できず、そのまま10年が過ぎた・・・ というケースです。
この場合、10年前に所有権は移転しており、ローンも本来であれば女性に移さなければいけませんでした。ローンが移せない場合は、本来その時点で売却すべき問題だったと思われます。なお、ケース2でも説明していますが、離婚という事情であれば、金融機関も借り換えを認めてくれるケースがありますので、必ずきちんと相談しましょう。しかしこれもまた人にはいろいろな事情があるもの。
ひとまずこうなってしまった場合、再度男性、女性双方の協力が必要になります。何か揉めそうであれば弁護士への依頼が必要ですが、もし男性・女性とも売却することで合意しているのなら、不動産会社や司法書士に依頼した方が良いかもしれません。
10年前の財産分与を根拠に男性から女性に所有権移転登記は可能ですが、ローンを借り入れている銀行から契約違反を追及される可能性もあります。税金上の問題が起こる可能性もあり、慎重に手続きを進めるべきでしょう。
このケースの場合の売却手続き
①不動産会社や弁護士の選定
複雑な不動産取引に慣れている不動産会社でも、なかなかやっかいなケースだと思います。何か所かに相談し、比較しましょう。提示金額ではなく、今後の進め方の意見を求め、安心できるところに依頼するようにしましょう。
②評価・購入相手の決定
ケースにもよりますが、一般的な不動産売却のように、インターネットや新聞折込広告等に掲載して一般に広く買手を募るのは難しいかもしれません。
買手を決めて、売買金額を決定したら、司法書士への登記手続き依頼、必要書類(印鑑証明書、住民票、戸籍謄本など)の収集、銀行への全額繰り上げ返済手続き等を一つずつ進めていきます。
③代金清算、所有権移転
代金を女性が受け取り、男性→女性の財産分与による所有権移転と、女性→買手の売買による所有権移転の登記を同時申請し、男性から銀行へ抵当権抹消手続きを取ってこの登記も同時申請します。イレギュラーなケースの為、事前準備をしっかり整える必要があります。
極端なレアケースを紹介しました。繰り返しですが、問題を先送りしないことが一番重要です。このケースの場合、離婚した時に不動産を売却しておいた方が、結果的に多くのお金を手元に残すことが出来たと思われます。