Case1 共有のまま売却し金銭で清算(不動産の売却)

最もよくあるパターンは「不動産の売却」です。
結婚生活中にマイホームを購入したが、「離婚後は双方ともその家に住みたくない。売却したい」となるのが一般的です。

離婚時の不動産の折半

離婚後の不動産売却のステップ

①売却希望額の決定

まずその不動産をいくらくらいで売却したいかを二人で相談して決めます。地域の不動産相場の調査から始まり、いくつかの不動産会社に査定依頼を出すのが一般的でしょう。
少しでも早く売却したいのか、時間を掛けてでも高値で売りたいのかなどによっても判断が変わりますし、夫婦双方の考えをすりあわせする必要があります。特にローン残高が多い場合、あまりにも売却額が低いとローンを返済しきれないリスクがあります。双方での事前の話し合いが重要です。

②不動産会社との契約

不動産の売却は、不動産会社と媒介契約というものを結ぶ必要があります。この媒介契約を結んで初めて、不動産の売買ネットワークに掲載されます。いくつかの不動産会社に査定を出して、販売に対して協力的なところを選びましょう。

③売却に関わる経費負担の割合

売却においては、手数料(仲介手数料といいます)が発生します。一般的には「売却額の3%+6万円(税別)」が発生します。例えば3,000万円で売れた不動産なら3,000万円x3%+6=96万円(+税)の金額がかかります。この仲介手数料を夫婦間双方でどのように負担されるのかを決めておく必要があります。

④売却期間中の光熱費負担割合の決定

不動産は売却に何ヶ月もかかることが一般的です。そのため、二人ともその家に住まないまま販売活動をした場合、細かい事ですが光熱費も掛かります。事前に双方で取り決めをしておく必要があります。

⑤価格交渉

買い手が現れても、価格交渉が入ることがあります。3,000万円で売りに出していた物件で「2,500万円なら購入しても良い」と言われた場合、双方で値引きに対する考え方の整理が必要です。事前に値引きの許容範囲を決めておけるとスムーズです。

⑥ローン返済手続き

無事に売却ができましたら売却金額の精算と、ローン返済手続きが必要になります。売却が決まったら借入先の金融機関にはすぐに連絡を入れ、準備の書類を郵送して貰います。また、決済日(売買の実行日)が決まった段階で金融機関に連絡をしてローン完済の申し込みを行います。

⑦決済・登記申請書署名捺印

買い手、売り手双方で売買の決済を行います。同時にローンを返済、手数料の支払いをして、差額を夫婦の銀行口座に振り込んで貰います。登記の変更手続きも終わって売却は完了です。細かい経費負担などは事前に取り決めをしておき、1回ですべて済ませるのがよいでしょう。

以上のように、不動産の売却には、夫婦間双方で取り決めをしなければいけないことが山積みです。この時に顔を合わせず手続きするには、気配りができる不動産会社に依頼するのが、一番ストレスのない方法です。

しかし、なかなか不動産会社の選び方は難しい側面がありますので、割り切って(元)夫婦別々の不動産会社に依頼するなど、納得の行く方法を選ぶことが重要かと思います。

不動産会社に依頼することのメリットとして、直接対面で話す必要がなくなること、第三者を挟むことでお互いに本音を言いやすくなること、等が挙げられます。デメリットは、売買契約を締結するのに、不動産会社に対して支払う仲介手数料が発生すること、夫婦間で直接話すのが苦ではないケースでは、他人を介すことでかえってスピードが遅くなること、等が挙げられます。

なお、弁護士に依頼すると費用が高くつくので躊躇する方もいらっしゃるようです。不動産以外の財産(養育費など)について分割方法が定まらない場合は、不動産会社だけで対応できる範疇を超えています。費用がもったいないのは分かりますが、弁護士などに依頼することをお勧めします。