近隣商業地内にある借地

今回は、約3年かかって当社仲介で売却できた、近隣商業地内にある借地権についてです。

対象地には築60年近くの2階建ての事業用の建物が建っており、借地面積は約100坪、建築基準法だけで考えれば、高層の建物、例えば15階建てのマンションが建築できます。建物所有者=借地人様は、相続が発生して、借地権付建物の売却をご希望されておりました。

当社はまず、無用の争いを避けるために、土地のご所有者様にコンタクトを取り、当社以外に窓口としてお願いしている不動産会社がないか、売却をご承諾いただけそうか、などのお話をお伺いしに行きました。当社仲介で売却することは特段問題ないとのことで、譲渡承諾料の計算方法などを打ち合わせた上で、借地権付建物として売りに出しました。土地所有者様からは、購入検討者が出てきたら、土地の利用方法などを聞きたいので連絡がほしい旨ご要望をいただきました。

しばらく売りに出していると、マンションデベロッパーから、分譲マンションの建築用地として借地権を譲ってもらえないかというご相談を頂きました。事業用定期借地権として、期間72年、それなりの権利金を地主様にお支払いし、地代も値上げし、更に新法の定期借地権に切り替わるということで、当社としては、土地所有者様にとってもかなり良い条件であると考え、ご承諾いただけるかご相談したところ、承諾できないというお返事をいただきました。

理由としては、①借地人=区分所有者となり、人数が多くなるので、以降の連絡、折衝などが複雑となってしまうこと、②建物の規模が大きく、地中内にかなりの長さの杭を打ち込む必要があるため、72年後に何らかのトラブルによって借地人が建物を解体できなくなった場合、土地所有者負担で建物を解体し、杭を抜く必要が生じる可能性がゼロとは言い切れないこと、の2つがありました。

また、当社も弁護士さんなど、いろいろなところに相談しましたが、仮に土地売買を裁判所への非訟手続きによる代諾許可で進められたとしても、建物建て替えの代諾許可は得られない可能性があるという結論に至りました。上記の2つの理由による譲渡承諾・建替え承諾の拒否がある程度合理的だという判断になる可能性があるのと、もともと現状でも契約書でも2階建ての建物建築を目的として借地権が設定されているため、あまりにそれとかけ離れた建物建築は、土地所有者の承諾なしに許可できないという結論になる可能性があるとのことでした。

結果としては争いを避けて話し合いを進めていくうちに、低層の建物建築を目的に借地権を買い受けてくれる先が見つかり、売買が成立しましたが、当社としてもとても勉強になった取引でした。最終的によい買主様に買い受けてもらえたので、この土地の将来がとても楽しみです。